歯列矯正と虫歯治療の順番は?同時進行は可能?歯科医が詳しく解説
「矯正治療を始めたいけれど、虫歯がある場合はどうすればいいの?」「虫歯治療と矯正治療、どちらを先にすべき?」このような疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
実際に、矯正治療を検討している患者様の中には、虫歯が見つかり「矯正治療を始める前に虫歯を治すべきか」と悩まれる方が少なくありません。また、矯正治療中に虫歯ができてしまった場合の対応についても、不安に感じる方が多いようです。
そこで本記事では、広島県安芸郡府中町のソレイユ眼科・矯正歯科の歯科医師が、歯列矯正と虫歯治療の関係について詳しく解説いたします。治療の順番や同時進行の可否、それぞれのケースに応じた最適な対応方法について、分かりやすくご説明いたします。
目次
1.歯列矯正と虫歯治療の基本的な関係
2.虫歯がある場合の矯正治療開始時期
3.矯正治療中に虫歯ができた場合の対応
4.虫歯の程度別の治療方針
5.矯正治療中の虫歯予防方法
6.よくある質問(Q&A)
7.まとめ
1. 歯列矯正と虫歯治療の基本的な関係
なぜ順番が重要なのか
まず初めに、歯列矯正と虫歯治療の関係についてご説明します。結論から申し上げると、基本的には虫歯治療を優先することが推奨されます。これには、いくつかの重要な理由があります。
虫歯は進行性の疾患です。まるで建物の土台が腐食していくように、放置すると徐々に悪化していきます。矯正治療は通常1年半から3年程度の長期間にわたるため、その間に虫歯が進行すると、より深刻な問題を引き起こす可能性があります。
矯正装置が虫歯治療に与える影響
次に、矯正装置の存在が虫歯治療に与える影響を考える必要があります。ワイヤー矯正の場合、ブラケットやワイヤーが歯の表面に装着されているため、虫歯の部位によっては治療が困難になることがあります。
これは、まるで家具が置かれた部屋の床を修理するようなもので、家具(矯正装置)を動かさないと、床(歯)の修理が十分にできない状況に似ています。
治療計画への影響
さらに、虫歯治療により歯の形態が変わると、矯正治療の計画に影響を与える可能性があります。特に、大きな詰め物や被せ物が必要な場合は、歯の形や大きさが変わるため、矯正装置の設計や治療計画の見直しが必要になることがあります。
2.虫歯がある場合の矯正治療開始時期
軽度の虫歯の場合
それでは、虫歯の程度別に対応方法をご説明します。まず、初期虫歯や軽度の虫歯の場合についてです。
軽度の虫歯の特徴
- ・表層のエナメル質のみの虫歯
- ・痛みがない状態
- ・小さな詰め物で対応可能
このような場合は、矯正治療開始前に虫歯治療を完了させることが一般的です。治療時間も短く、1〜2回の通院で完了することが多いため、矯正治療の開始を大きく遅らせることはありません。
中等度の虫歯の場合
次に、象牙質まで達した中等度の虫歯についてです。
中等度の虫歯の特徴
- ・冷たいものがしみる
- ・やや大きめの詰め物が必要
- ・場合によっては神経の処置が必要
この段階の虫歯も、矯正治療前に治療を完了させることが推奨されます。ただし、治療に数回の通院が必要になるため、矯正治療の開始時期について歯科医師とよく相談することが大切です。
重度の虫歯の場合
さらに、神経まで達した重度の虫歯や、抜歯が必要な虫歯の場合についてです。
重度の虫歯の対応
- ・根管治療(神経の治療)が必要
- ・被せ物の製作が必要
- ・場合によっては抜歯が必要
このような場合は、虫歯治療を優先し、完全に治療が完了してから矯正治療を開始します。特に被せ物が必要な場合は、矯正治療後の最終的な歯並びを考慮して治療を行う必要があるため、慎重な治療計画が求められます。
3. 矯正治療中に虫歯ができた場合の対応
ワイヤー矯正中の虫歯治療
それでは、矯正治療中に虫歯ができてしまった場合の対応についてご説明します。まず、ワイヤー矯正中のケースです。
装置を付けたままできる治療
- ・小さな虫歯の詰め物治療
- ・装置から離れた部位の治療
- ・歯の裏側や側面の治療
これらの場合は、矯正装置を装着したまま虫歯治療を行うことが可能です。ただし、治療の難易度は通常より高くなります。
装置を外す必要がある治療
- ・装置の直下の虫歯
- ・大きな範囲の治療が必要な場合
- ・被せ物が必要な場合
このような状況では、一時的にブラケットやワイヤーを外して虫歯治療を行い、治療完了後に再度装置を装着します。
マウスピース矯正中の虫歯治療
次に、マウスピース矯正中の虫歯治療についてです。
マウスピース矯正の場合は、装置を取り外して治療できるため、ワイヤー矯正と比べて虫歯治療がしやすいという利点があります。ただし、虫歯治療により歯の形が変わると、マウスピースが合わなくなる可能性があります。
対応方法
- 1.マウスピースを外して虫歯治療を実施
- 2.治療内容に応じてマウスピースの調整または作り直し
- 3.必要に応じて治療計画の見直し
4. 虫歯の程度別の治療方針

Screenshot
初期虫歯(CO)の場合
それでは、虫歯の進行度別の治療方針を詳しく見ていきましょう。まず、初期虫歯についてです。
初期虫歯の特徴
- ・歯の表面が白く濁っている
- ・穴は開いていない状態
- ・痛みはない
この段階では、削る治療は不要で、フッ素塗布や適切な口腔ケアにより進行を抑えることができます。矯正治療と並行して経過観察を行い、進行が見られた場合に治療を行うという選択肢もあります。
エナメル質の虫歯(C1)の場合
次に、エナメル質に限局した虫歯についてです。
治療の優先度
- ・矯正治療開始前の治療が推奨される
- ・小さな詰め物で対応可能
- ・1回の治療で完了することが多い
矯正治療の開始を数週間遅らせることで、確実に治療を完了させることができます。
象牙質の虫歯(C2)の場合
さらに、象牙質まで達した虫歯についてです。
治療の方針
- ・必ず矯正治療前に治療を完了させる
- ・しみる症状がある場合は早急な対応が必要
- ・詰め物の大きさによっては矯正計画への影響を考慮
神経まで達した虫歯(C3・C4)の場合
そして、最も深刻な状態の虫歯についてです。
治療の流れ
- 1.根管治療(神経の治療)を実施
- 2.土台と被せ物の製作
- 3.完全に治療が終了してから矯正治療開始
このレベルの虫歯がある場合は、矯正治療の開始が数ヶ月遅れることもありますが、確実な治療を優先することが重要です。
5.矯正治療中の虫歯予防方法
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日常的な口腔ケア
それでは、矯正治療中の虫歯予防について解説します。まず、日常的なケア方法についてです。
基本的な歯磨き
- ・食後30分以内の歯磨きを習慣化
- ・1回の歯磨き時間は最低3分以上
- ・やわらかめの歯ブラシを使用
矯正治療中は、通常の2倍程度の時間をかけて丁寧に磨くことが推奨されます。
専用ケアグッズの活用
次に、矯正治療中に役立つケアグッズについてです。
ワイヤー矯正の場合
- ・矯正用歯ブラシ(先端が細いタイプ)
- ・歯間ブラシ
- ・デンタルフロス(糸ようじ)
- ・ワンタフトブラシ
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マウスピース矯正の場合
- ・マウスピース専用洗浄剤
- ・やわらかい歯ブラシ(装置用)
- ・フッ素入り歯磨き粉
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定期的な専門ケア
さらに、自宅でのケアに加えて、専門的なケアも重要です。
推奨される頻度
- ・矯正調整時の同時クリーニング(月1回程度)
- ・歯科衛生士による専門的なクリーニング
- ・フッ素塗布による予防処置
定期的な専門ケアにより、虫歯の早期発見と予防が可能になります。
食生活の工夫
そして、食生活の改善も虫歯予防に重要です。
注意すべき食習慣
- ・だらだら食べを避ける
- ・糖分の多い飲み物の頻繁な摂取を控える
- ・食後は必ず口をゆすぐ
特に、間食の回数を減らすことで、虫歯のリスクを大幅に下げることができます。
6. よくある質問(Q&A)
Q1. 矯正治療を始めてから虫歯が見つかった場合、治療は中断されますか?
A1. 虫歯の程度によります。小さな虫歯であれば、矯正装置を付けたまま治療できることが多いです。ただし、大きな虫歯や装置の直下にある虫歯の場合は、一時的に装置を外して治療を行います。この場合でも、治療完了後すぐに矯正治療を再開できますので、大きな遅れにはなりません。
Q2. 虫歯治療で歯の形が変わると、矯正治療に影響はありますか?
A2. 小さな詰め物程度であれば、矯正治療への影響は最小限です。しかし、大きな被せ物が必要な場合は、歯の形や大きさが変わるため、矯正計画の見直しが必要になることがあります。そのため、矯正治療前に虫歯治療を完了させ、最終的な歯の形を確定させてから矯正治療を開始することが理想的です。
Q3. 矯正治療中は虫歯になりやすいと聞きましたが、本当ですか?
A3. はい、矯正治療中は通常よりも虫歯のリスクが高まります。特にワイヤー矯正の場合、装置の周りに食べかすが溜まりやすく、歯磨きも難しくなるためです。しかし、適切な口腔ケアと定期的な専門クリーニングを行うことで、虫歯を予防することは十分に可能です。
Q4. 矯正治療と虫歯治療を同じ歯科医院でできますか?
A4. 多くの矯正歯科医院では、虫歯治療も併せて行うことができます。ただし、根管治療や外科的な処置など、専門的な治療が必要な場合は、専門医を紹介されることもあります。当院では、矯正治療と一般歯科治療の両方に対応しており、総合的な治療計画のもとで治療を進めることができます。
7. まとめ
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以上のように、歯列矯正と虫歯治療の関係は、患者様の口腔内の状態によって異なります。基本的な原則を理解し、適切な治療順序を選択することが大切です。
重要なポイントの整理
治療の基本原則
- 虫歯治療を優先することが基本
- 小さな虫歯は矯正前に治療完了
- 重度の虫歯は完全に治療してから矯正開始
矯正治療中の虫歯対応
- 小さな虫歯は装置を付けたまま治療可能
- 大きな虫歯は一時的に装置を外して治療
- マウスピース矯正は比較的治療がしやすい
虫歯予防のポイント
- 丁寧な口腔ケアの習慣化
- 専用ケアグッズの活用
- 定期的な専門クリーニング
- 食生活の改善
また、矯正治療と虫歯治療を考える際には、以下の点も重要です:
- 早めの相談が大切:矯正治療を検討し始めたら、まず口腔内の状態を確認
- 総合的な治療計画:虫歯の状態を含めた包括的な治療計画を立てる
- 予防を重視:矯正治療中の虫歯予防に力を入れる
- 定期検診の継続:矯正治療中も虫歯のチェックを怠らない
さらに、矯正治療開始前には、虫歯だけでなく歯周病の状態も確認することが重要です。健康な口腔環境を整えてから矯正治療を開始することで、より良い治療結果を得ることができます。
当院では、矯正治療と一般歯科治療の両方に対応しており、患者様お一人お一人の状態に合わせた最適な治療計画をご提案しております。虫歯がある状態で矯正治療をご検討の方、矯正治療中の虫歯予防についてご不安のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
美しい歯並びと健康な歯を両立させるために、適切な治療順序と予防ケアで、安心して矯正治療を進めていきましょう。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の症状や治療方針については、必ず歯科医師にご相談ください。
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