矯正治療中の口臭対策|原因と予防法を歯科衛生士が詳しく解説
「矯正治療を始めてから、口臭が気になるようになった」「人と話すときに口臭が心配で自信が持てない」このような悩みを抱えている方は少なくありません。
実際に、矯正治療中は装置の影響で口腔内の衛生管理が難しくなり、口臭が発生しやすくなります。特にワイヤー矯正の場合、ブラケットやワイヤーの周りに食べかすが溜まりやすく、通常よりも丁寧なケアが必要です。
そこで本記事では、広島県安芸郡府中町のソレイユ眼科・矯正歯科の歯科衛生士が、矯正治療中の口臭について詳しく解説いたします。口臭が発生する原因から、具体的な予防法、日常生活で実践できるケア方法まで、分かりやすくご説明いたします。
目次
1.矯正治療中に口臭が発生する原因
2.矯正装置別の口臭リスク
3.効果的な口臭予防のための歯磨き方法
4.矯正治療中におすすめのケアグッズ
5.生活習慣での口臭対策
6.よくある質問(Q&A)
7.まとめ
1.矯正治療中に口臭が発生する原因

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食べかすの蓄積
まず初めに、矯正治療中に口臭が発生する主な原因についてご説明します。最も大きな要因は、食べかすの蓄積です。
ワイヤー矯正の場合、ブラケットとワイヤーの隙間、ワイヤーと歯の間など、食べかすが溜まりやすい箇所が多数存在します。これは、まるで複雑な形状の容器を洗うようなもので、通常の歯磨きでは完全に除去することが困難です。
食べかすが蓄積しやすい箇所
- ・ブラケットとワイヤーの隙間
- ・ブラケットと歯の境目
- ・ワイヤーと歯ぐきの境目
- ・奥歯の装置周辺
細菌の繁殖
次に、蓄積した食べかすを栄養源として細菌が繁殖します。口腔内には数百種類の細菌が存在し、特に嫌気性菌と呼ばれる酸素を嫌う菌が、揮発性硫黄化合物(VSC)という悪臭の原因物質を産生します。
矯正装置があることで、口腔内の自浄作用(唾液による洗浄効果)が低下し、細菌がより繁殖しやすい環境になってしまいます。
唾液の減少
さらに、矯正装置の装着により、一時的に唾液の分泌が減少することがあります。唾液には口腔内を清潔に保つ重要な役割があり、唾液が減少すると細菌が繁殖しやすくなります。
唾液の重要な働き
- ・食べかすを洗い流す
- ・口腔内のpHバランスを保つ
- ・抗菌作用により細菌の増殖を抑える
- ・口腔粘膜を保護する
口呼吸による乾燥
また、矯正装置の違和感から、無意識に口呼吸になってしまう方がいます。口呼吸は口腔内の乾燥を招き、唾液の働きが低下するため、口臭の原因となります。
2.矯正装置別の口臭リスク
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ワイヤー矯正の場合
それでは、矯正装置の種類別に口臭リスクについて解説します。まず、ワイヤー矯正についてです。
ワイヤー矯正の特徴 ワイヤー矯正は、最も口臭が発生しやすい矯正方法と言えます。装置が複雑で、24時間装着されているため、食後の清掃が不十分だと、食べかすが長時間口腔内に残ることになります。
特に注意が必要な食べ物
- ・繊維質の野菜(ほうれん草、セロリなど)
- ・挽肉料理(ハンバーグ、ミートソースなど)
- ・種のある果物(いちご、キウイなど)
- ・ゴマなど小さな粒状のもの
マウスピース矯正の場合
次に、マウスピース矯正についてです。
マウスピース矯正の特徴 マウスピース矯正は、食事の際に装置を外すため、ワイヤー矯正と比べて口臭のリスクは低めです。ただし、装置自体の清掃が不十分だと、マウスピースに細菌が繁殖し、口臭の原因となります。
注意すべきポイント
- ・マウスピースの不十分な清掃
- ・装着前の歯磨き不足
- ・マウスピースの長期使用による劣化
- ・保管方法の不適切さ
裏側矯正の場合
さらに、裏側矯正についても触れておきます。
裏側矯正は、装置が舌側にあるため、舌に触れやすく、舌苔(ぜったい:舌の表面の汚れ)が装置に付着しやすい傾向があります。そのため、装置の清掃に加えて、舌のケアも重要になります。
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3. 効果的な口臭予防のための歯磨き方法
基本的な歯磨きの手順
それでは、矯正治療中の効果的な歯磨き方法についてご説明します。まず、基本的な手順についてです。
推奨される歯磨きのタイミング
- ・毎食後30分以内に歯磨き
- ・就寝前は特に丁寧に磨く
- ・理想的には1日3回以上
基本的な歯磨きの手順
- 1,水で口をゆすぎ、大きな食べかすを除去
- 2.やわらかめの歯ブラシで歯の表面を磨く
- 3,装置の周りを丁寧に磨く
- 4,歯と歯ぐきの境目を磨く
- 5,最後に全体をもう一度確認
装置周りの磨き方
次に、装置周りの具体的な磨き方についてです。
ブラケット周辺の磨き方
- 1,ブラケットの上部を斜め45度から磨く
- 2,ブラケットの下部も同様に磨く
- 3,ブラケットの側面を小刻みに磨く
- 4,ワイヤーの下も忘れずに磨く
歯ブラシの毛先を使い分けながら、まるで絵筆で細かい部分を描くように、丁寧に磨いていくイメージです。
時間をかけた丁寧な歯磨き
さらに、矯正治療中は通常の2倍程度の時間をかけて歯磨きすることが推奨されます。
推奨される歯磨き時間
- ・矯正治療前:3分程度
- ・矯正治療中:5〜7分程度
- ・特に就寝前:10分程度
時間をかけることで、装置の細かい部分まで確実に清掃することができます。
4. 矯正治療中におすすめのケアグッズ
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矯正用歯ブラシ
それでは、矯正治療中に役立つケアグッズについてご紹介します。まず、矯正用歯ブラシについてです。
矯正用歯ブラシの特徴
- ・中央部分の毛が短く、V字型にカットされている
- ・ブラケット周辺を効率的に磨ける
- ・やわらかめの毛質が多い
通常の歯ブラシと併用することで、より効果的な清掃が可能になります。
ワンタフトブラシ
次に、ワンタフトブラシ(タフトブラシ)についてです。
ワンタフトブラシの特徴
- ・先端が細く、ピンポイントで磨ける
- ・ブラケット周辺や奥歯の清掃に最適
- ・歯と歯ぐきの境目も磨きやすい
まるで絵筆のように細かい部分を磨くことができ、矯正治療中には必須のアイテムです。
歯間ブラシとデンタルフロス
さらに、歯間の清掃には歯間ブラシやデンタルフロスが有効です。
矯正中の歯間ケア
- ・矯正用フロス:スレダー(糸通し)付きのフロス
- ・歯間ブラシ:ワイヤーの下を通して使用
- ・ウォーターフロッサー:水流で汚れを除去
これらを組み合わせることで、より徹底した清掃が可能になります。
口腔洗浄液
また、口腔洗浄液も補助的に使用することができます。
口腔洗浄液の選び方
- ・アルコールフリーのものを選ぶ
- ・フッ素配合のものが望ましい
- ・刺激の少ないタイプを選ぶ
ただし、口腔洗浄液だけでは食べかすは除去できないため、あくまで歯磨きの補助として使用することが重要です。
5.生活習慣での口臭対策
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水分補給の重要性
それでは、生活習慣での口臭対策についてご説明します。まず、十分な水分補給が重要です。
水分補給のポイント
- ・こまめに水を飲む(1日1.5〜2リットル程度)
- ・食事中も水を飲む
- ・起床時と就寝前にコップ1杯の水
- ・カフェインや糖分の多い飲み物は控えめに
水分補給により唾液の分泌が促進され、口腔内の自浄作用が高まります。
食事の工夫
次に、食事内容の工夫も効果的です。
口臭予防に良い食べ物
- ・緑黄色野菜(ビタミン補給)
- ・ヨーグルト(善玉菌の補給)
- ・緑茶(カテキンの抗菌作用)
- ・梅干し(唾液分泌の促進)
避けるべき食べ物
- ・ニンニクやニラなど臭いの強い食材
- ・糖分の多い食べ物
- ・粘着性の高い食べ物
舌のケア
さらに、舌のケアも忘れてはいけません。
舌苔の除去方法
- 1,舌専用のクリーナーまたはやわらかい歯ブラシを使用
- 2,奥から手前に向かって優しく清掃
- 3,1日1回、朝の歯磨き時に実施
- 4,強くこすりすぎない
舌苔は口臭の大きな原因の一つであり、適切なケアにより口臭を大幅に減らすことができます。
鼻呼吸の意識
そして、鼻呼吸を心がけることも重要です。
鼻呼吸のメリット
- ・口腔内の乾燥を防ぐ
- ・唾液の分泌を正常に保つ
- ・細菌の繁殖を抑える
- ・全身の健康にも良い影響
意識的に鼻呼吸を心がけ、必要に応じて耳鼻科の受診も検討しましょう。
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6. よくある質問(Q&A)
Q1. 外出先での口臭対策はどうすればよいですか?
A1. 外出先では、携帯用の歯磨きセットを持ち歩くことをお勧めします。完全な歯磨きが難しい場合は、水でしっかり口をゆすぐだけでも効果があります。また、シュガーレスガムを噛むことで唾液の分泌を促進し、口臭を軽減できます。口腔洗浄液の小さなボトルを携帯するのも良い方法です。
Q2. マウスウォッシュだけで口臭予防は十分ですか?
A2. いいえ、マウスウォッシュだけでは不十分です。マウスウォッシュは一時的に口臭を抑える効果はありますが、食べかすや歯垢を物理的に除去することはできません。必ず歯磨きと併用し、マウスウォッシュは補助的な役割として使用してください。
Q3. 矯正治療中の口臭は治療が終われば改善しますか?
A3. はい、適切なケアを継続していれば、矯正装置を外した後は口臭が改善することが多いです。ただし、矯正治療中に口腔ケアを怠ると、虫歯や歯周病が進行し、治療後も口臭が残る可能性があります。そのため、矯正期間中から適切なケアを継続することが重要です。
Q4. 口臭が気になって人と話すのが不安です。どうすればよいですか?
A4. まず、この記事でご紹介した口臭対策を実践してみてください。また、定期的な歯科検診を受け、専門家にチェックしてもらうことで、客観的な評価が得られます。実際には周囲が気づかないレベルでも、本人だけが気にしていることも多いです。不安が強い場合は、歯科医師や歯科衛生士に相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。
7. まとめ
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以上のように、矯正治療中の口臭は適切なケアにより予防・改善することが可能です。矯正治療中だからこそ、より丁寧な口腔ケアを心がけることが大切です。
口臭予防の重要ポイント
基本的なケア
- ・毎食後の丁寧な歯磨き(5〜7分程度)
- ・矯正用歯ブラシやワンタフトブラシの活用
- ・歯間ブラシ・フロスによる歯間清掃
- ・舌のケアも忘れずに
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生活習慣の改善
- ・こまめな水分補給
- ・バランスの良い食事
- ・鼻呼吸を心がける
- ・十分な睡眠
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定期的な専門ケア
- ・月1回の矯正調整時のクリーニング
- ・歯科衛生士による専門的指導
- ・早期発見・早期対処
- ・適切なケアグッズの選択
また、矯正治療中の口臭対策で重要なことは:
- ・予防が最も効果的:口臭が発生してから対処するより、予防が重要
- ・継続が大切:毎日の積み重ねが結果につながる
- ・完璧を目指さない:できる範囲で着実に実践する
- ・専門家に相談:困ったときは遠慮なく相談する
さらに、矯正治療中の口臭予防は、単に口臭を防ぐだけでなく、虫歯や歯周病の予防にもつながります。つまり、口臭対策として行う丁寧なケアが、結果的に口腔全体の健康維持に役立つのです。
当院では、矯正治療中の患者様に対して、歯科衛生士による丁寧なブラッシング指導と定期的なクリーニングを行っております。口臭や口腔ケアについてご不安やご質問がございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
美しい歯並びを手に入れる過程で、口臭を気にすることなく自信を持って笑顔で過ごせるよう、私たちが全力でサポートいたします。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の症状や治療計画については、必ず歯科医師にご相談ください。
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