矯正治療中の妊娠・出産|治療継続の注意点と産前産後のケア
「矯正治療を始めたいけれど、妊娠の予定もある…両立できるか心配」「矯正治療中に妊娠が判明した。治療は続けられるの?」多くの女性が、このような不安を抱えています。
矯正治療は1〜3年という長期間にわたるため、治療期間中に妊娠・出産を経験される方も少なくありません。実は、矯正治療中の妊娠・出産は決して珍しいことではなく、適切な配慮とケアを行えば、治療を継続することは十分に可能です。
この記事では、矯正治療中に妊娠・出産を迎える方のために、治療継続の可否、妊娠中の口腔環境の変化、そして産前産後のケアについて詳しく解説します。不安を抱えている方も、正しい知識を持つことで、安心して治療と妊娠・出産を両立できるはずです。
目次
- 1.矯正治療と妊娠・出産の両立について
- 2.妊娠中の口腔環境の変化と注意点
- 3.妊娠時期別の矯正治療の対応
- 4.出産後の矯正治療再開とケア
- 5.妊娠を計画している方へのアドバイス
- 6.よくある質問(Q&A)
- 7.まとめ
1. 矯正治療と妊娠・出産の両立について
基本的な考え方
結論から申し上げると、矯正治療中に妊娠・出産をすることは可能です。矯正治療そのものが、妊娠や胎児に直接的な悪影響を与えることはありません。
実際、矯正治療を受けている患者様の年齢層を見ると、20代後半から30代の女性が多く、この年代は妊娠・出産を経験される時期と重なります。多くの方が、治療を継続しながら無事に出産されています。
ただし、妊娠中は体調や口腔環境が変化するため、通常の治療とは異なる配慮が必要になることも事実です。歯科医師や産婦人科医と連携しながら、適切に対応していくことが大切です。
矯正治療が妊娠に与える影響
矯正装置の装着そのものは、妊娠や胎児の発育に影響を与えません。ブラケットやワイヤー、マウスピースなどの矯正装置は、口の中だけに作用するものであり、全身への影響は基本的にありません。
安心できるポイント:
- ・矯正装置は妊娠に影響しない
- ・通常の矯正調整も胎児に害はない
- ・マウスピース矯正の素材も安全性が確認されている
- ・歯を動かす力は、妊娠に悪影響を与えない
むしろ、矯正治療によって歯並びや咬み合わせが改善されることで、食事がしやすくなり、栄養摂取が良好になるというメリットもあります。
妊娠中に注意が必要な処置
妊娠中でも矯正治療の継続は可能ですが、以下の処置については慎重な対応が必要です。
妊娠中に避けるべき、または慎重に行う処置:
- ・レントゲン撮影(特に妊娠初期)
- ・抜歯などの外科的処置
- ・麻酔を使用する処置
- ・長時間の治療
これらの処置が必要な場合は、妊娠時期を考慮したり、出産後に延期したりするなど、柔軟に対応することが一般的です。
2. 妊娠中の口腔環境の変化と注意点
妊娠すると、ホルモンバランスの変化により、口腔環境にさまざまな変化が現れます。これらの変化を理解し、適切に対処することが、矯正治療を継続する上で重要です。
妊娠性歯肉炎
妊娠中は、女性ホルモンの増加により、歯茎が炎症を起こしやすくなります。これを「妊娠性歯肉炎」と呼びます。
主な症状:
- ・歯茎が赤く腫れる
- ・歯磨きの時に出血しやすくなる
- ・歯茎が敏感になり、触れると痛い
- ・歯茎が盛り上がってくる
矯正装置を装着していると、ただでさえ歯磨きが難しく、歯肉炎のリスクが高まります。妊娠中はさらにそのリスクが増すため、より丁寧なケアが必要になります。
研究によると、妊婦の約50〜70%が何らかの歯肉炎の症状を経験すると報告されています。矯正治療中の方は、特に注意深くケアを行う必要があります。
つわりによる口腔ケアの困難
妊娠初期から中期にかけて、多くの方がつわりを経験します。つわりは、矯正治療中の口腔ケアに大きな影響を与えることがあります。
つわりによる影響:
- ・歯ブラシを口に入れると吐き気がする
- ・矯正装置の違和感が増す
- ・食事が不規則になり、口腔ケアのタイミングが難しい
- ・嘔吐による胃酸で歯が傷む
例えば、通常なら矯正装置のケアに15分程度かけている方でも、つわりの時期は数分の歯磨きで精一杯ということもあります。完璧を目指すのではなく、できる範囲で続けることが大切です。
唾液の性質の変化
妊娠中は、唾液の分泌量や性質が変化することがあります。
変化の内容:
- ・唾液の分泌量が減少する(口の中が乾きやすい)
- ・唾液の粘度が高くなる
- ・口の中の自浄作用が低下する
- ・虫歯のリスクが高まる
唾液は、お口の中を清潔に保つ重要な役割を果たしています。その機能が低下すると、矯正装置周りに汚れが溜まりやすくなり、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。
食事の変化と間食の増加
妊娠中は、食事の好みが変わったり、少量ずつ頻繁に食べるようになったりすることがあります。
影響:
- ・間食の回数が増える
- ・甘いものを好むようになる
- ・炭酸飲料や酸味のあるものを欲する
- ・食後すぐに歯磨きできないことが増える
矯正治療中は、食後の歯磨きが特に重要ですが、妊娠中は体調によって難しい場合もあります。食事のたびに完璧なケアができなくても、水で口をすすぐ、ガムを噛むなど、できることから始めることが推奨されます。
3. 妊娠時期別の矯正治療の対応
妊娠の時期によって、体調や注意すべきポイントが異なります。時期別の対応について見ていきましょう。
妊娠初期(0〜15週)
妊娠初期は、胎児の重要な器官が形成される大切な時期です。つわりも始まり、体調が不安定になりやすい時期でもあります。
この時期の対応:
- ・レントゲン撮影は避ける
- ・抜歯などの外科的処置は延期する
- ・つわりがひどい場合は、調整の頻度を減らすことも検討
- ・無理のない範囲で通院する
妊娠が判明したら、できるだけ早く歯科医師に報告しましょう。治療計画を妊娠に合わせて調整することができます。
つわり対策のケア方法:
- ・小さめの歯ブラシを使用する
- ・香りの強くない歯磨き粉を選ぶ
- ・吐き気がマシな時間帯に歯磨きをする
- ・完璧を目指さず、できる範囲で続ける
- ・水で口をすすぐだけでも行う
妊娠中期(16〜27週)
妊娠中期は、つわりが落ち着き、比較的体調が安定する時期です。「安定期」とも呼ばれます。
この時期の対応:
- ・通常の矯正調整を継続できることが多い
- ・必要な歯科治療がある場合、この時期に行うことが推奨される
- ・虫歯治療や歯石除去などのメンテナンスに適している
- ・妊娠初期に延期した処置があれば、検討できる
この時期は、体調が良ければ積極的に口腔ケアに取り組むことができます。出産後はしばらく歯科受診が難しくなることもあるため、この時期にしっかりとケアしておくことが大切です。
妊娠後期(28週〜出産)
お腹が大きくなり、動くのが大変になってくる時期です。早産のリスクも考慮する必要があります。
この時期の対応:
- ・長時間の治療は避ける
- ・仰向けの体勢が苦しい場合は、体勢を工夫する
- ・調整の頻度を減らすことも検討
- ・出産予定日が近づいたら、緊急時の連絡先を確認しておく
診療チェアに仰向けになると、大きくなった子宮が大静脈を圧迫し、気分が悪くなることがあります。体を少し左に傾けたり、背もたれの角度を調整したりすることで、楽な姿勢で治療を受けられることがあります。
苦しい場合は、遠慮なく歯科医師やスタッフに伝えましょう。
4. 出産後の矯正治療再開とケア
出産直後の口腔環境
出産後は、ホルモンバランスが急激に変化し、さらに育児による生活リズムの変化もあり、口腔環境に影響が出ることがあります。
出産後の変化:
- ・授乳によるカルシウム不足の懸念
- ・睡眠不足による免疫力の低下
- ・育児による時間的制約
- ・ストレスによる歯ぎしりや食いしばり
矯正治療を継続する場合、これらの変化に配慮しながら、無理のないペースで進めることが大切です。
授乳中の矯正治療
授乳中でも、矯正治療を継続することは可能です。矯正装置やマウスピースが、母乳に影響を与えることはありません。
授乳中の注意点:
- ・レントゲン撮影は可能(必要に応じて防護エプロンを使用)
- ・痛み止めを服用する場合は、授乳への影響を確認する
- ・歯科麻酔を使用する処置も、適切な時期を選べば可能
痛み止めや抗生物質などの薬を処方される場合は、授乳中であることを必ず歯科医師に伝えましょう。授乳に影響の少ない薬を選択してもらえます。
育児と矯正治療の両立
赤ちゃんのお世話をしながら、自分の矯正治療も続けるのは大変なことです。以下のような工夫で、両立しやすくなります。
両立のための工夫:
- ・赤ちゃんの授乳や睡眠のリズムに合わせて通院時間を調整する
- ・家族のサポートを得て、通院時は赤ちゃんを預ける
- ・赤ちゃん連れでの受診が可能か、事前に歯科医院に確認する
- ・オンラインでの経過確認など、通院頻度を減らす方法を相談する
多くの歯科医院では、小さなお子様連れでの受診に対応しています。キッズスペースや託児サービスがある医院もありますので、事前に確認してみましょう。
口腔ケアの時間確保
育児中は、自分の時間を確保することが難しく、丁寧な口腔ケアができないこともあります。
時短ケアのポイント:
- ・赤ちゃんが寝ている間に、集中してケアする
- ・電動歯ブラシを活用して、効率的に磨く
- ・ワンタフトブラシなど、短時間で効果的なツールを使う
- ・完璧を目指さず、できる範囲で継続する
育児は24時間体制の大変な仕事です。自分を責めず、できることから少しずつ続けることが大切です。
5. 妊娠を計画している方へのアドバイス
これから矯正治療を始める方で、妊娠も計画している場合、どのようなスケジュールで進めるのが良いでしょうか。
治療開始のタイミング
妊娠と矯正治療、どちらを優先すべきかは、個人の状況によって異なります。
妊娠前に治療を開始する選択:
- ・メリット:治療中の検査や処置を妊娠前に済ませられる
- ・デメリット:治療期間中に妊娠時期が重なる可能性がある
出産後に治療を開始する選択:
- ・メリット:妊娠・出産に集中できる、体調の安定した時期に治療できる
- ・デメリット:育児との両立が必要になる、治療開始が遅れる
どちらが正解というわけではありません。ご自身のライフプランや年齢、歯並びの状態などを総合的に考えて、歯科医師と相談しながら決めることが推奨されます。
事前に済ませておくべき処置
妊娠前に矯正治療を開始する場合、以下の処置を事前に済ませておくことが理想的です。
妊娠前に済ませたいこと:
- ・精密検査(レントゲン撮影を含む)
- ・虫歯や歯周病の治療
- ・親知らずの抜歯
- ・矯正のための抜歯(必要な場合)
- ・矯正装置の装着
特にレントゲン撮影や抜歯などの処置は、妊娠中は避けたい、または慎重に行う必要があるため、可能であれば妊娠前に済ませておくと安心です。
治療計画の柔軟性
妊娠の予定がある場合は、治療計画を立てる際に、その旨を歯科医師に伝えておくことが大切です。
柔軟な治療計画のポイント:
- ・妊娠時期に合わせて調整スケジュールを調整できる
- ・妊娠中に避けるべき処置を事前に済ませる
- ・出産後の治療再開を見越した計画を立てる
- ・通院頻度を調整しやすい治療方法を選ぶ
例えば、マウスピース矯正の場合、自分で装置を交換できるため、通院頻度が少なくて済むというメリットがあります。妊娠中や出産後の忙しい時期には、このような治療方法が適していることもあります。
6. よくある質問(Q&A)
Q1. 矯正治療中に妊娠が判明しました。治療は中断すべきですか?
A. 基本的には、治療を中断する必要はありません。ただし、妊娠が判明したら、できるだけ早く歯科医師に伝えることが重要です。
妊娠の状況に合わせて、以下のような対応が取られます。
一般的な対応:
- ・通常の調整は継続できることが多い
- ・レントゲン撮影が必要な場合は、出産後に延期する
- ・抜歯などの外科的処置は、妊娠中期か出産後に延期する
- ・つわりがひどい時期は、調整の頻度を減らすことも検討
治療を継続するか、一時的に中断するかは、妊娠の経過、つわりの程度、治療の進行状況などを総合的に判断して決めます。歯科医師と産婦人科医の両方に相談しながら、最適な方法を選びましょう。
Q2. 妊娠中にレントゲン撮影をしても大丈夫ですか?
A. 歯科のレントゲン撮影による被曝量は非常に少なく、お腹から離れた部位の撮影であるため、胎児への影響は極めて小さいとされています。
歯科レントゲンの被曝量:
- ・歯科のレントゲン1枚あたりの被曝量は、日常生活で自然に浴びる放射線量の数日分程度
- ・撮影時には防護エプロンを着用する
- ・お腹から離れた口の部分の撮影である
それでも、妊娠初期(特に器官形成期)は念のため避け、どうしても必要な場合は妊娠中期以降、または出産後に延期することが一般的です。
緊急性が高い場合は、産婦人科医とも相談の上、適切な防護措置を取って撮影することもあります。
Q3. つわりがひどくて矯正装置のケアができません。どうすればいいですか?
A. つわりの時期は、無理をせず、できる範囲でケアを続けることが大切です。完璧にできなくても、自分を責める必要はありません。
つわり時期のケア方法:
- ・体調の良い時間帯を見つけて、その時にケアする
- ・短時間でも、こまめに口をすすぐ
- ・歯ブラシを小さいものに変える
- ・香りの少ない、またはミント味以外の歯磨き粉を試す
- ・どうしても無理な時は、水でしっかり口をすすぐだけでも行う
つわりは一時的なものです。体調が回復したら、また丁寧なケアを再開すれば大丈夫です。つわりの時期に虫歯や歯肉炎が悪化しないか心配な場合は、歯科医院でプロフェッショナルクリーニングを受けることも検討しましょう。
Q4. 授乳中ですが、矯正の調整後に痛み止めを飲んでも大丈夫ですか?
A. 授乳中でも服用できる痛み止めがあります。ただし、自己判断で市販薬を服用するのではなく、必ず歯科医師に相談してください。
授乳中の痛み止め:
- ・一部の鎮痛剤は、授乳への影響が少ないとされています
- ・歯科医師に授乳中であることを伝えれば、適切な薬を処方してもらえます
- ・服用のタイミングを工夫することで、母乳への移行を最小限にできます
例えば、授乳直後に服用し、次の授乳までに時間を空けるという方法もあります。詳しくは、歯科医師や産婦人科医、薬剤師に相談しましょう。
Q5. 出産後、いつから矯正治療を再開できますか?
A. 出産後の体調が安定すれば、いつでも治療を再開できます。一般的には、産後1〜2ヶ月程度で再開される方が多いです。
再開のタイミング:
- ・産後の体調が回復してから
- ・育児のリズムがある程度安定してから
- ・通院の時間が確保できるようになってから
焦る必要はありません。ご自身の体調と育児の状況を最優先に考え、無理のないタイミングで再開しましょう。
治療を数ヶ月中断しても、大きな問題になることは少ないです。ただし、長期間中断すると、後戻りのリスクが高まることがあるため、できれば定期的に状態をチェックしてもらうことが推奨されます。
Q6. 第二子を妊娠する予定があります。矯正治療は一旦やめるべきですか?
A. 必ずしもやめる必要はありませんが、ライフプランと治療計画を総合的に考えることが大切です。
検討すべきポイント:
- ・治療の進行状況(どの程度まで進んでいるか)
- ・第二子の妊娠予定時期
- ・第一子の育児との両立の可能性
- ・経済的な負担
- ・ご自身の年齢
例えば、すでに治療が8割程度進んでいる場合は、完了させてから妊娠する方が効率的かもしれません。一方、治療をまだ始めたばかりであれば、一旦中断して出産後に再開することも選択肢の一つです。
歯科医師と相談し、ご自身と家族にとって最適なプランを立てましょう。
7. まとめ
矯正治療中の妊娠・出産は、決して珍しいことではありません。適切な知識と配慮があれば、両立することは十分に可能です。
この記事の重要ポイント:
- ・矯正治療中の妊娠・出産は可能で、治療を継続できることが多いです
- ・妊娠が判明したら、できるだけ早く歯科医師に伝えることが大切です
- ・妊娠中はホルモンバランスの変化により、口腔環境が変わりやすくなります
- ・つわりの時期は無理をせず、できる範囲でケアを続けましょう
- ・レントゲンや抜歯などの処置は、妊娠時期を考慮して適切に対応します
- ・出産後も、体調が安定すれば治療を再開できます
女性にとって、妊娠・出産は人生の大きなイベントです。同時に、美しい歯並びを手に入れることも、自信と笑顔をもたらす大切な目標です。どちらも諦める必要はありません。
大切なのは、歯科医師や産婦人科医とオープンにコミュニケーションを取り、ご自身の状況に合わせた柔軟な対応をすることです。完璧を目指すのではなく、その時々の状況に応じて、できることを続けていきましょう。
矯正治療も、妊娠・出産も、時間をかけて歩む長い道のりです。焦らず、無理をせず、ご自身のペースで進んでいくことが大切です。そして、その道のりを支えてくれる家族や医療スタッフとともに、理想の笑顔と新しい命の誕生を迎えましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個々の症状や治療方針については、必ず歯科医師や産婦人科医にご相談ください。妊娠中・授乳中の矯正治療についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。皆様の健康と幸せな出産を心より応援しています。
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