矯正治療中のスポーツ活動|マウスガードの必要性と注意点
スポーツシーンでマウスガードを使用している選手を見たことがありますか?「矯正治療を始めたいけれど、部活やスポーツを続けられるか心配…」「矯正装置をつけたまま、安全にスポーツができるのだろうか」そんな不安を抱えている学生の方や、スポーツを楽しむ大人の方は少なくありません。
実は、矯正治療中でもほとんどのスポーツを続けることは可能です。ただし、矯正装置をつけている状態では、通常よりもお口の中のケガのリスクが高まるため、適切な対策が必要になります。特に接触の多いスポーツでは、マウスガードの使用が強く推奨されています。
この記事では、矯正治療中のスポーツ活動における注意点、マウスガードの役割と種類、そして安全にスポーツを楽しむための具体的な方法について詳しく解説します。この記事を読めば、矯正治療とスポーツを両立させる自信が持てるはずです。
目次
- 1.矯正治療中のスポーツ活動のリスク
- 2.マウスガードの役割と重要性
- 3.マウスガードの種類と選び方
- 4.スポーツ別の注意点とマウスガード使用の推奨度
- 5.矯正治療中のスポーツで気をつけるべきこと
- 6.よくある質問(Q&A)
- 7.まとめ
1. 矯正治療中のスポーツ活動のリスク
矯正装置によるケガのリスク
矯正装置、特にワイヤー矯正のブラケットやワイヤーは、お口の中に突起物がある状態です。スポーツ中に顔や口元に衝撃を受けると、これらの装置が口の中の粘膜を傷つけてしまう可能性があります。
通常であれば軽い接触で済むような場面でも、矯正装置があることで、以下のような怪我につながることがあります。
矯正装置による主なケガ:
- ・頬や唇の内側の粘膜が切れる
- ・舌が装置に当たって傷つく
- ・ブラケットが外れて口の中を傷つける
- ・ワイヤーが曲がって粘膜に刺さる
ある調査では、矯正治療中でマウスガードを使用していない学生アスリートの約30〜40%が、スポーツ中に口の中に何らかのケガを経験したと報告されています。
装置の破損リスク
スポーツ中の衝撃は、矯正装置そのものを破損させてしまう可能性もあります。
よくある装置のトラブル:
- ・ブラケットが歯から外れる
- ・ワイヤーが曲がったり外れたりする
- ・マウスピース矯正の場合、マウスピースが破損する
- ・装置を固定している接着剤が剥がれる
装置が破損すると、緊急での受診が必要になったり、治療計画に遅れが生じたりすることがあります。場合によっては、追加の費用が発生することもあるため、予防的な対策が重要です。
歯そのもののケガのリスク
矯正治療中は、歯が動いている途中の状態です。そのため、歯を支える骨との結びつきが通常よりも弱くなっており、強い衝撃を受けると、歯が折れたり抜けたりするリスクが高まります。
特に治療開始直後や、調整を行った直後の数日間は、歯が動きやすい状態になっているため、より注意が必要です。激しいスポーツをされる方は、調整のタイミングを試合やイベントと調整することも検討すると良いでしょう。
2. マウスガードの役割と重要性
マウスガードとは
マウスガード(スポーツマウスピースとも呼ばれます)は、歯や顎、お口の粘膜を外傷から守るために装着する保護具です。弾力性のある素材でできており、上の歯に装着することが一般的です。
マウスガードは、スポーツ用品としてだけでなく、矯正治療中の患者様にとっては医療的な保護具としての役割も果たします。
マウスガードが守るもの
マウスガードは、複数の役割を同時に果たす重要な保護具です。
1. 歯を守る 衝撃から歯を守り、歯の破折や脱落を防ぎます。矯正治療中の歯は通常よりも脆弱な状態にあるため、この保護は特に重要です。
2. 矯正装置を守る ブラケットやワイヤーなどの矯正装置を、外部からの衝撃や過度な力から守ります。装置の破損を防ぐことで、治療の中断を避けられます。
3. 口の中の粘膜を守る 矯正装置とお口の粘膜の間にクッション層を作り、装置による口の中の怪我を防ぎます。これは矯正治療中の患者様にとって、最も重要な役割の一つです。
4. 顎の関節を守る 下顎から頭部への衝撃を緩和し、顎の関節や頭部への影響を軽減します。脳震盪のリスクを下げる効果も報告されています。
マウスガード使用の効果
適切なマウスガードの使用により、スポーツ中の歯科外傷を大幅に減らすことができます。
研究によると、マウスガードを適切に使用することで、歯科外傷のリスクを約60〜80%減少させることができるとされています。特に矯正治療中の患者様では、マウスガードの使用により、口の中の軟組織の損傷リスクが90%以上減少したという報告もあります。
また、マウスガードは単に怪我を防ぐだけでなく、心理的な安心感をもたらし、スポーツのパフォーマンス向上にもつながることが指摘されています。「怪我をする心配」という不安から解放されることで、よりプレーに集中できるようになるのです。
3. マウスガードの種類と選び方
マウスガードには、いくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。矯正治療中の方に適したマウスガードを選ぶことが大切です。
既製品タイプ
スポーツ用品店などで販売されている、すぐに使えるタイプのマウスガードです。
特徴:
- ・価格が安価
- ・すぐに入手できる
- ・サイズ調整ができないため、フィット感に欠ける
- ・矯正装置に対応していないものが多い
- ・話しにくい、呼吸しにくいことが多い
矯正治療中の方には、あまり推奨されないタイプです。装置にフィットせず、かえって装置を傷つけてしまう可能性があります。
マウスフォームタイプ(お湯で調整するタイプ)
お湯で柔らかくして、自分の歯型に合わせて成形するタイプです。
特徴:
- ・既製品よりもフィット感が良い
- ・比較的安価
- ・自宅で調整できる
- ・矯正装置の形状変化に対応しにくい
- ・調整に失敗すると使えなくなることがある
矯正治療中の方が使用する場合、歯の移動に伴って定期的に作り直す必要があります。一時的な使用や、予算を抑えたい場合の選択肢として考えられます。
カスタムメイドタイプ(歯科医院で作製)
歯科医院で歯型を取り、個人に合わせて作製するタイプです。矯正治療中の方には、このタイプが最も推奨されます。
特徴:
- ・完全に個人の歯型に合わせて作製される
- ・矯正装置を考慮した設計が可能
- ・フィット感が非常に良い
- ・話しやすく、呼吸もしやすい
- ・保護効果が最も高い
- ・定期的な作り直しが必要な場合がある
- ・他のタイプに比べて費用がかかる
矯正治療中の方の場合、治療の段階に応じて数回作り直す必要があることもありますが、安全性と快適性を考えると、カスタムメイドタイプが最適と言えます。
矯正治療用マウスガードの特徴
矯正治療中の方向けに設計されたマウスガードには、以下のような特徴があります。
設計上の工夫:
- ・ブラケットやワイヤーを収容できる空間がある
- ・装置への圧力を分散させる構造
- ・歯が動くことを考慮した適度な余裕がある
- ・粘膜を傷つけないよう滑らかな内面
- ・装着しやすく、外しやすい形状
歯科医師に相談して、ご自身の矯正治療の状態に合ったマウスガードを選びましょう。
4. スポーツ別の注意点とマウスガード使用の推奨度
スポーツの種類によって、マウスガードの必要性は異なります。ここでは、代表的なスポーツについて、マウスガードの推奨度と注意点をご紹介します。
【推奨度:非常に高い】接触・格闘系スポーツ
該当スポーツ: ラグビー、アメリカンフットボール、ボクシング、空手、柔道、レスリング、アイスホッケー、ラクロスなど
これらのスポーツでは、相手との直接的な接触や、顔面への衝撃のリスクが非常に高くなります。矯正治療中の方は、マウスガードの使用が必須と考えるべきです。
注意点:
- ・試合だけでなく、練習時も必ず装着する
- ・定期的にマウスガードの状態を確認し、破損があれば交換する
- ・競技のルールでマウスガード着用が義務付けられている場合もある
- ・矯正装置の調整後は、マウスガードのフィット感を再確認する
【推奨度:高い】球技系スポーツ
該当スポーツ: バスケットボール、サッカー、野球、ソフトボール、バレーボール、ハンドボールなど
ボールや他の選手との接触により、顔面への衝撃のリスクがあります。
注意点:
- ・特にゴールキーパーやキャッチャーなど、衝撃を受けやすいポジションの方は必ず使用する
- ・練習の強度に応じて、マウスガードの使用を検討する
- ・ヘディングやスライディングなど、衝撃の可能性がある動作を行う際は特に注意する
サッカーでは、肘との接触やボールが顔に当たることがありますし、バスケットボールでは他の選手の腕や肘が顔に当たることがあります。矯正治療中は、これらの接触で口の中を怪我するリスクが高まります。
【推奨度:中程度】個人競技
該当スポーツ: 体操、陸上競技、水泳、テニス、バドミントン、卓球など
直接的な接触は少ないものの、転倒や器具との接触のリスクがあります。
注意点:
- ・体操の場合、着地時の衝撃や器具への接触に注意する
- ・テニスやバドミントンでは、ラケットが顔に当たる可能性がある
- ・水泳の場合、飛び込みやターン時にプールの壁や底に顔をぶつける可能性がある
これらのスポーツでは、マウスガードの常時使用は必須ではありませんが、特にリスクの高い場面では使用を検討することが推奨されます。
【推奨度:状況による】その他のスポーツ
該当スポーツ: ランニング、ヨガ、ピラティス、ウェイトトレーニング、ゴルフなど
これらのスポーツは、一般的には顔面への衝撃のリスクは低いとされています。
注意点:
- ・ウェイトトレーニングでは、重いものを持ち上げる際に歯を強く噛みしめることがあるため、歯ぎしり用のマウスガードを検討することもある
- ・ランニングなどで転倒のリスクがある場合は、マウスガードの携帯を検討する
- ・矯正装置の違和感が気になる場合は、歯科用ワックスでカバーする
5. 矯正治療中のスポーツで気をつけるべきこと
スポーツ前の準備
安全にスポーツを楽しむために、事前の準備が大切です。
スポーツ前のチェックリスト:
- 1.矯正装置の状態を確認する(緩んでいる部分はないか)
- 2.マウスガードを装着する(該当するスポーツの場合)
- 3.装置が当たって痛い部分があれば、歯科用ワックスでカバーする
- 4.水分補給用の飲み物を準備する
- 5.緊急時の連絡先(歯科医院)を確認しておく
特に試合や大会の前は、数日前に歯科医院で装置の状態をチェックしてもらうことが推奨されます。
スポーツ中の注意点
スポーツ中は、以下の点に注意しましょう。
プレー中の心がけ:
- ・過度に激しいプレーは控えめにする(特に治療開始直後や調整直後)
- ・口を閉じてプレーする習慣をつける
- ・顔面への衝撃を避けるよう意識する
- ・違和感や痛みを感じたら、すぐにプレーを中断する
- ・マウスガードが外れたり、ずれたりしたら、すぐに装着し直す
矯正治療は通常、数年にわたる長期的な治療です。その間、スポーツを完全に控える必要はありませんが、適度な配慮は必要です。
スポーツ後のケア
スポーツの後は、お口の中のケアを念入りに行いましょう。
スポーツ後のケア手順:
- 1.マウスガードの洗浄 使用後のマウスガードは、水で洗い流し、専用のケースに保管します。定期的に歯ブラシで優しく洗浄し、清潔に保ちましょう。
- 2.口をすすぐ スポーツドリンクなどを飲んだ後は、水で口をよくすすぎます。スポーツドリンクには糖分が含まれているため、虫歯のリスクが高まります。
- 3.装置の状態確認 鏡を見て、ブラケットやワイヤーに異常がないか確認します。緩みや外れがあれば、できるだけ早く歯科医院に連絡しましょう。
- 4.丁寧な歯磨き スポーツ後は、通常よりも丁寧に歯磨きを行います。汗をかいているため、お口の中も乾燥しがちです。しっかりと水分補給をしながら、ケアを行いましょう。
- 5.痛みや違和感のチェック 口の中に傷や痛みがないか確認します。もし切り傷や強い痛みがある場合は、早めに歯科医院に相談してください。
マウスガードのメンテナンス
マウスガードを長く、効果的に使用するために、適切なメンテナンスが重要です。
日常のお手入れ:
- ・使用後は必ず水で洗い流す
- ・週に1〜2回、歯ブラシと中性洗剤で優しく洗浄する
- ・熱湯や直射日光を避けて保管する(変形の原因になります)
- ・専用のケースに入れて保管する
- ・破損や変形がないか定期的にチェックする
交換のタイミング:
- ・破損や大きな変形が見られた時
- ・フィット感が悪くなった時
- ・矯正装置の大きな調整があった時
- ・歯科医師から交換を勧められた時
一般的に、カスタムメイドのマウスガードでも、使用状況によっては6ヶ月から1年程度で交換が必要になることがあります。
6. よくある質問(Q&A)
Q1. 矯正治療中は、どんなスポーツでもマウスガードが必要ですか?
A. すべてのスポーツでマウスガードが必須というわけではありませんが、接触の可能性があるスポーツでは強く推奨されます。
ラグビーやボクシングなど、相手との接触が避けられないスポーツでは、マウスガードの使用がほぼ必須と考えるべきです。サッカーやバスケットボールなど、接触の可能性があるスポーツでも、使用を強くおすすめします。
一方、ヨガやランニングなど、顔面への衝撃のリスクが低いスポーツでは、マウスガードは必須ではありません。ただし、転倒の可能性がある場合は、携帯しておくと安心です。
Q2. マウスガードをつけると呼吸がしにくくなりませんか?
A. カスタムメイドのマウスガードであれば、呼吸への影響は最小限に抑えられます。
既製品のマウスガードは厚みがあったり、フィットが悪かったりするため、呼吸がしにくく感じることがあります。しかし、歯科医院で作製するカスタムメイドのマウスガードは、個人の口の形に完全に合わせて作られるため、呼吸への影響はほとんどありません。
実際、多くのプロアスリートがカスタムメイドのマウスガードを使用しており、パフォーマンスへの悪影響は報告されていません。むしろ、怪我の心配がなくなることで、より集中してプレーできるという声も多く聞かれます。
Q3. マウスピース矯正をしていますが、スポーツ中もマウスピースをつけたままで大丈夫ですか?
A. マウスピース矯正のマウスピースは、スポーツ用のマウスガードとは異なるものです。
マウスピース矯正用のアライナー(マウスピース)は、歯を動かすためのもので、衝撃から歯を守る設計にはなっていません。そのため、接触の可能性があるスポーツでは、マウスピースの上から、または外してスポーツ用のマウスガードを装着することが推奨されます。
マウスピース矯正をしている方向けの、アライナーの上から装着できるマウスガードもありますので、歯科医師に相談してみてください。
Q4. 部活の大会が近いのですが、矯正治療を始めても大丈夫でしょうか?
A. 大会のスケジュールに合わせて、治療開始のタイミングを調整することができます。
矯正装置を装着した直後の数日から1週間程度は、違和感や痛みを感じることがあります。また、装置に慣れるまでの期間も個人差があります。
大切な大会が控えている場合は、以下のような対応が考えられます。
タイミング調整の例:
- ・大会の1〜2ヶ月前に装置を装着し、大会までに慣れる時間を確保する
- ・大会終了後に治療を開始する
- ・大会期間中は調整を避け、装置の状態を安定させておく
・カウンセリング時に、大会やスポーツのスケジュールを歯科医師に伝え、最適なタイミングを相談しましょう。
Q5. マウスガードの費用はどのくらいかかりますか?保険は適用されますか?
A. マウスガードの費用は種類によって異なり、保険適用の有無も状況によります。
既製品やマウスフォームタイプのマウスガードは、スポーツ用品店などで比較的安価に購入できます。一方、カスタムメイドのマウスガードは、歯科医院で作製するため、既製品よりも費用がかかります。
保険適用については、スポーツ用のマウスガードは基本的に自費診療となることが多いです。ただし、矯正治療の一環として必要と判断される場合や、顎関節症の治療目的で作製する場合など、保険が適用されるケースもあります。
詳しい費用や保険適用については、かかりつけの歯科医院に直接お問い合わせください。
Q6. マウスガードをつけていれば、どんなプレーをしても大丈夫ですか?
A. マウスガードは怪我のリスクを大幅に減らしますが、完全に防げるわけではありません。
マウスガードは非常に効果的な保護具ですが、過信は禁物です。特に矯正治療中は、歯が動いている途中の状態であり、通常よりも脆弱です。
適切なマウスガードを使用した上で、以下のような配慮も大切です。
心がけたいこと:
- ・無理な体勢でのプレーは避ける
- ・相手との不必要な接触を避ける
- ・治療開始直後や調整直後は、特に慎重にプレーする
- ・違和感や痛みがあれば、すぐにプレーを中断する
マウスガードとこれらの配慮を組み合わせることで、より安全にスポーツを楽しむことができます。
7. まとめ
矯正治療中でも、適切な対策を講じることで、安全にスポーツを楽しむことができます。スポーツは心身の健康に欠かせないものですから、矯正治療を理由に諦める必要はありません。
この記事の重要ポイント:
- ・矯正治療中のスポーツ活動では、装置によるケガや装置の破損のリスクが高まります
- ・マウスガードは、歯、矯正装置、口の粘膜、顎の関節を守る重要な保護具です
- ・カスタムメイドのマウスガードが、矯正治療中の方には最も推奨されます
- ・スポーツの種類によって、マウスガードの必要性は異なります
- ・スポーツ前後の適切なケアとメンテナンスが大切です
矯正治療とスポーツの両立は、決して難しいことではありません。歯科医師やスポーツ指導者と相談しながら、適切な保護具を使用し、必要な配慮を行うことで、安全にスポーツを続けることができます。
「矯正治療を始めたいけれど、スポーツを続けられるか心配」という方は、まずは歯科医師に相談してみてください。一人ひとりの状況に合わせた、最適なアドバイスを受けることができます。
美しい歯並びと、スポーツで培う健康な身体、そして充実した学校生活や日常生活。これらすべてを手に入れるために、矯正治療とスポーツの両立を目指しましょう。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個々の症状や対処法については、必ず歯科医師にご相談ください。マウスガードの作製や矯正治療についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。
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