矯正治療と歯周病の関係|治療前に知っておくべき歯茎の健康管理
「矯正治療を始めたいけれど、歯茎が腫れやすいのが気になる…」そんな不安を抱えている方は少なくありません。実は、矯正治療と歯周病には密接な関係があり、治療を成功させるためには歯茎の健康管理が非常に重要です。
この記事では、矯正治療を検討されている方、すでに治療中の方に向けて、歯周病と矯正治療の関係性、治療前後の注意点、そして健康な歯茎を保つための具体的な方法について詳しく解説します。正しい知識を身につけることで、安心して矯正治療に臨んでいただけるはずです。
目次
- 1.歯周病とは?基礎知識を理解しよう
- 2.矯正治療が歯周病に与える影響
- 3.歯周病が矯正治療に与える影響
- 4.矯正治療前に確認すべき歯茎の状態
- 5.矯正治療中の歯周病予防法
- 6.よくある質問(Q&A)
- 7.まとめ
1. 歯周病とは?基礎知識を理解しよう
歯周病の基本的なメカニズム
歯周病は、歯を支える組織(歯茎や歯を支える骨)に炎症が起こる病気です。お口の中には数百種類もの細菌が存在していますが、その中の特定の細菌が歯垢(プラーク)として歯に付着すると、歯茎に炎症を引き起こします。
初期段階では歯肉炎と呼ばれ、歯茎が赤く腫れたり、歯磨きの際に出血したりする程度です。しかし、放置すると歯周炎へと進行し、歯を支える骨が溶けてしまい、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともあります。
日本人の約8割が歯周病予備軍
厚生労働省の調査によると、成人の約8割が歯周病またはその予備軍だと言われています。多くの方が「自分には関係ない」と考えがちですが、実は非常に身近な病気なのです。
特に30代以降になると、歯周病のリスクは年齢とともに上昇していきます。矯正治療を検討される方の中には、この年代の方も多くいらっしゃいますので、治療前の歯周病チェックは欠かせません。
矯正治療が歯周病に与える影響
矯正装置による清掃性の低下
矯正治療、特にワイヤーとブラケットを使用する従来の矯正装置を装着すると、どうしても歯磨きが難しくなります。装置の周りに歯垢が溜まりやすく、通常よりも丁寧なケアが必要になるのです。
例えば、ブラケットとワイヤーの間、ブラケットと歯茎の境目など、細かい隙間に食べかすが詰まりやすくなります。これらの部分は歯ブラシだけでは十分に清掃できないため、特別なケアグッズが必要になることがあります。
歯の移動による一時的な歯茎の変化
矯正治療で歯を動かす過程では、歯を支える骨が少しずつ変化していきます。この時、歯茎にも一時的な変化が現れることがあります。
具体的には、歯が動く方向の歯茎が一時的に薄くなったり、反対側が厚くなったりすることがあるのです。この変化自体は治療の正常な過程ですが、この時期は特に歯茎が敏感になっているため、丁寧なケアが求められます。
治療中の炎症リスク
矯正装置が当たることによる刺激や、清掃不良による歯垢の蓄積により、治療中は歯茎が炎症を起こしやすい状態になります。
ある調査では、矯正治療中の患者様の約30〜40%に、治療前には見られなかった歯肉炎の症状が認められたという報告もあります。ただし、適切なケアを行えば、これらの炎症は予防・改善が可能です。
3. 歯周病が矯正治療に与える影響
歯の移動速度への影響
歯周病が進行していると、歯を支える骨が既に減少している状態です。この状態で矯正治療を行うと、健康な状態に比べて歯の移動がうまく進まないことがあります。
骨が少ないということは、歯を支える土台が弱くなっているようなものです。しっかりとした土台がなければ、計画通りに歯を動かすことが難しくなり、治療期間が延びてしまう可能性もあります。
歯茎の退縮リスク
歯周病がある状態で矯正治療を行うと、歯茎が下がってしまう「歯肉退縮」のリスクが高まります。特に、元々歯茎が薄い方や、歯周病で骨が減少している方は注意が必要です。
歯茎が下がると、歯の根元が露出して見た目が気になるだけでなく、知覚過敏の原因になることもあります。冷たいものがしみるようになったり、歯ブラシが当たると痛みを感じたりすることがあるのです。
治療結果の安定性への影響
歯周病があると、矯正治療後の歯並びが後戻りしやすくなることが知られています。せっかく時間と費用をかけて整えた歯並びが、元に戻ってしまっては残念ですよね。
健康な歯茎と骨に支えられている歯は、矯正後もその位置で安定しやすいのですが、歯周病で組織が弱っていると、歯が動きやすい状態のままになってしまうことがあります。
4. 矯正治療前に確認すべき歯茎の状態
セルフチェックのポイント
矯正治療を始める前に、ご自身で歯茎の状態をチェックしてみましょう。以下のような症状がある場合は、歯周病の可能性があります。
チェックリスト:
- ・歯磨きの時に歯茎から出血する
- ・歯茎が赤く腫れている(健康な歯茎はピンク色)
- ・歯茎から膿が出ることがある
- ・口臭が気になる
- ・歯茎がむずがゆい、痛い
- ・歯が長くなったように見える(歯茎が下がっている)
- ・歯がグラグラする
これらの症状が一つでもある場合は、矯正治療を始める前に歯科医師に相談することが推奨されます。
専門的な検査の重要性
歯科医院では、より詳しい検査によって歯周病の状態を確認します。代表的な検査には以下のようなものがあります。
ポケット検査 歯と歯茎の境目にある溝(歯周ポケット)の深さを測定します。健康な状態では1〜2mm程度ですが、3mm以上になると歯周病の可能性があります。
レントゲン検査 歯を支える骨の状態を確認します。目に見えない部分の骨の減り具合を把握することができます。
出血検査 専用の器具で歯茎を軽く触り、出血があるかを確認します。炎症がある部分は出血しやすくなっています。
治療開始のタイミング
歯周病が見つかった場合、まずは歯周病の治療を優先することが一般的です。歯茎の状態が改善してから矯正治療を開始することで、より安全で効果的な治療が可能になります。
治療期間は歯周病の進行度によって異なりますが、軽度の場合は数週間から1〜2ヶ月程度で改善することが多いです。この期間を「準備期間」と捉え、矯正治療の成功のための大切なステップとお考えください。
5. 矯正治療中の歯周病予防法
基本の歯磨き方法
矯正装置を付けている間は、通常の3倍程度の時間をかけて丁寧に磨くことが推奨されています。朝晩だけでなく、できれば毎食後に歯磨きを行いましょう。
効果的な磨き方のステップ:
- 1.装置の上部を磨く ブラケットの上側に歯ブラシを45度の角度で当て、小刻みに動かします。
- 2.装置の下部を磨く 同様に、ブラケットの下側、歯茎との境目を重点的に磨きます。
- 3.歯の噛む面を磨く 通常通り、歯の上面もしっかりと磨きましょう。
一つの部位につき20回程度、細かく振動させるように磨くのがポイントです。
補助的な清掃器具の活用
矯正治療中は、歯ブラシだけでは不十分な場合が多いため、以下のような補助的な清掃器具の使用が推奨されます。
歯間ブラシ ブラケットとワイヤーの間、歯と歯の間の清掃に効果的です。サイズは歯科医師や歯科衛生士に相談して選びましょう。
ワンタフトブラシ 先端が細くなった小さなブラシで、ブラケット周りの細かい部分を磨くのに適しています。
フロス(デンタルフロス) 矯正用のフロスやフロススレッダーを使えば、ワイヤーの下も清掃できます。少し手間はかかりますが、歯と歯の間のケアには欠かせません。
電動歯ブラシ 効率的に歯垢を除去できますが、矯正装置に適したタイプを選ぶことが大切です。購入前に歯科医師に相談されることをおすすめします。
定期的な歯科医院でのケア
矯正治療中は、通常よりも頻繁に歯科医院でのプロフェッショナルケアを受けることが推奨されます。
PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング) 専用の機器を使って、ご自身では取りきれない歯垢や着色を除去します。2〜3ヶ月に1回程度受けることが理想的です。
フッ素塗布 矯正装置周りは虫歯にもなりやすいため、フッ素塗布で歯を強化することも有効です。
生活習慣での注意点
日々の生活習慣も、歯茎の健康に大きく影響します。
食事の工夫 砂糖の多い食べ物や飲み物は控えめにしましょう。また、硬すぎるものや粘着性の高い食べ物は、装置に詰まりやすいため注意が必要です。
こまめな水分補給 お口の中が乾燥すると、細菌が繁殖しやすくなります。こまめに水を飲むことで、唾液の分泌を促し、自浄作用を高めましょう。
禁煙 喫煙は歯周病のリスクを大幅に高めます。矯正治療を機に禁煙を検討されることをおすすめします。
ストレス管理と十分な睡眠 ストレスや睡眠不足は免疫力を低下させ、歯周病のリスクを高めます。規則正しい生活を心がけましょう。
6. よくある質問(Q&A)
Q1. 歯周病があっても矯正治療はできますか?
A. 歯周病の程度によります。軽度から中度の歯周病であれば、まず歯周病の治療を行い、状態が安定してから矯正治療を開始することが一般的です。重度の歯周病の場合は、まず歯周病の治療に専念し、十分に改善してから矯正治療の可否を判断します。
担当の歯科医師が、お一人おひとりの状態に応じて最適な治療計画を提案しますので、まずはご相談いただくことをおすすめします。
Q2. 矯正治療中に歯茎が腫れてきた場合、どうすればいいですか?
A. まずは歯磨きをより丁寧に行い、補助的な清掃器具も活用して、歯垢をしっかり除去しましょう。それでも改善しない場合は、早めに歯科医院を受診してください。
炎症が軽度であれば、専用のクリーニングと適切なブラッシング指導で改善することがほとんどです。放置すると悪化する可能性がありますので、「様子を見よう」と思わず、気になったらすぐに相談することが大切です。
Q3. マウスピース矯正の方が歯周病のリスクは低いですか?
A. マウスピース矯正は取り外しができるため、通常の歯磨きが行えるという利点があります。その点では、従来のワイヤー矯正に比べて清掃性が良いと言えます。
ただし、マウスピースを装着している時間が長いため、装着前の歯磨きが不十分だと、かえって歯周病や虫歯のリスクが高まることもあります。どの矯正方法を選んでも、適切なケアを継続することが最も重要です。
Q4. 矯正治療中に歯茎から出血するのは普通ですか?
A. 矯正装置を付けた直後や調整直後は、歯茎が敏感になっているため、少量の出血が見られることはあります。しかし、継続的な出血や大量の出血は歯周病のサインかもしれません。
歯磨きのたびに出血する、出血が数日以上続く、といった場合は、歯科医院で診てもらうことが推奨されます。早期発見・早期対処が、深刻な問題を防ぐ鍵となります。
Q5. 歯周病の治療をしながら矯正治療を続けることはできますか?
A. 状況によっては可能です。軽度の歯肉炎程度であれば、矯正治療を継続しながら歯周病のケアを強化することで対応できる場合があります。
しかし、中度以上の歯周病が発覚した場合は、一時的に矯正治療を中断し、歯周病治療を優先することもあります。これは矯正治療の成功と、歯の長期的な健康のために必要な判断です。
Q6. 矯正治療後も歯周病のケアは必要ですか?
A. はい、非常に重要です。矯正治療が終わった後も、定期的な歯科検診と適切なセルフケアを継続することが推奨されます。
実は、矯正治療後の保定期間(歯並びを安定させる期間)も、歯周病予防の大切な時期です。せっかく綺麗に整えた歯並びを長く維持するためにも、生涯を通じた歯周病予防が大切なのです。
7. まとめ
矯正治療と歯周病は、切っても切れない関係にあります。治療を成功させ、美しい歯並びを長く維持するためには、歯茎の健康管理が欠かせません。
この記事の重要ポイント:
- 歯周病があると矯正治療の効果や安定性に影響が出る可能性があります
- 矯正治療中は通常よりも歯周病のリスクが高まるため、より丁寧なケアが必要です
- 治療前の歯周病チェックと必要に応じた治療が重要です
- 適切な歯磨き方法と補助的な清掃器具の使用で、矯正治療中も歯茎の健康を保つことができます
- 定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケアが予防の鍵となります
矯正治療は、単に歯並びを整えるだけでなく、お口全体の健康を向上させる機会でもあります。歯周病予防を含めた総合的なケアを行うことで、治療の成功率が高まり、より満足度の高い結果が得られるでしょう。
もし歯茎の状態について不安や疑問がある場合は、矯正治療を始める前に歯科医師に相談されることをおすすめします。専門家による適切な診断とアドバイスを受けることで、安心して治療に臨むことができます。
矯正治療を通じて、美しい歯並びと健康な歯茎の両方を手に入れられるよう、一緒に取り組んでいきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個々の症状や治療方針については、必ず歯科医師にご相談ください。
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